わずか1年で顧客層の拡大と、新たな「ペット視点」の訴求軸の確立に成功。
モンパニエとの共創で実現した商品開発の秘密とは?
【企業・事例概要】
シャープ株式会社
家電メーカーとして多様なライフスタイルに寄り添う製品を展開するシャープ株式会社(以下、シャープ)。
同社が近年注力するスティック掃除機市場において、新たな突破口となったのが「低騒音化」という価値でした。
人間だけでなく「ペットにもやさしい掃除機」という新しい訴求軸を確立し、市場での存在感を高めるに至った背景には、獣医師である茂木先生、そしてモンパニエ社との共創がありました。プロジェクトを牽引した同社の担当者にお話を伺いました。
▼取り組み前の課題
・既存の「共働き家庭」という顧客層の拡大と、新たな訴求軸の確立に課題感を持っていた
・社内に動物行動学の知見がなく、商材開発における学術的根拠が不足していた
・確固たる根拠(エビデンス)がなかったため、「ペットにやさしい」という訴求軸を打ち出せていなかった
▼取り組み後の効果
・プロモーションにおいて「ペットにもやさしい」というエビデンスをベースとした訴求が可能になった
・第三者的な知見と解説が加わることで、商材としての説得力や納得感が格段に増した
・「これまでシャープの掃除機が届いていなかった、熱心なペットオーナー層」へ販路開拓できた
まず初めに、御社の事業概況や展開されているサービス、および今回の対象となった商材の特徴について教えてください。
半谷氏:
当事業部では、掃除機や洗濯機を中心とした生活家電事業を担当しています。
一般のお客様向けの市販商品だけでなく、法人のお客様向けの業務用商品も展開しており、幅広いお客様のニーズにお応えしています。
私たちが大切にしているのは、単に家電を提供することではなく、お客様の暮らしや業務における困りごとを理解し、課題解決することです。
掃除や洗濯に関わるさまざまな課題に対し、機能・使いやすさ・快適性など多面的な価値を提供できるよう日々取り組んでいます。
当社は家電メーカーとして多岐にわたる製品を展開していますが、今回モンパニエ様とお取り組みをさせていただいたのは「掃除機事業」になります。現在、掃除機市場のメインストリームとなっているのが「スティック掃除機」であり、当社としても非常に注力している領域です。
スティック掃除機を開発する上での大きな差別化ポイントの一つとなるポイントが「低騒音化」です。当社は業界に先駆けて低騒音化に取り組んできており、その技術やノウハウの蓄積が現在の製品開発における大きな強みとなっています。そこで当社の商品である「RACTIVE Air(ラクティブ エア)」シリーズでは、特に運転音を抑えたモデルを展開しています。

シャープ株式会社Smart Appliances & Solutions事業本部
清潔ランドリー事業部 国内商品企画部
(左)主任 加藤 篤史氏 (右)部長 半谷 知久氏
なぜ「低騒音化」に着目されたのでしょうか?
加藤氏:
近年、共働き世帯が非常に増えています。日中は仕事で外出されているため、掃除機をかける時間帯がどうしても「朝」や「晩」に集中する家庭が多くなります。しかし、従来の掃除機は運転音が大きく、集合住宅での近隣への配慮や、家の中で寝ているご家族への影響から「周りが気になって掃除機がかけられない」という不安やストレスを抱える方が多くいらっしゃいました。
そこで、高い吸引力や軽量コンパクトさはしっかりとキープしたまま、時間帯を気にせずいつでも使える「低騒音化」を実現した商品を開発・発売いたしました。
今回、モンパニエとのお取り組みが開始される前は、どのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。
加藤氏:
2022年に最初の低騒音化モデルを発表した際、我々がイメージしていたのはあくまで「人間の生活スタイル(共働き世帯の朝晩の掃除)に対しての課題」を視点にした商品開発でした。
しかし、発表後に市場やメディアの記者の方々から「この運転音なら、掃除機の音を嫌がるペットにとってもすごく良いのではないか」というフィードバックをいただいたのです。
半谷氏:
実はそれまで、我々は「ペットが掃除機の音を嫌がっている」ということ自体、深く認識していませんでした。低騒音化の開発においてペットの視点はスコープの中にそもそも入っていなかったのです。
周りの方々の声をきっかけに、「ペットにやさしい」という新たな訴求軸に大きな可能性を感じました。しかし、メーカーとして情報を発信する以上、確固たる根拠(エビデンス)がないまま打ち出すことはできません。「当社の低騒音化技術が、動物の聴覚にとって十分に配慮された運転音となっているか」を科学的にどうアプローチして検証すべきかという知見が社内に不足している点が、大きな課題でした。
獣医師である茂木先生との出会いのきっかけや、実際にどのようなプロセスで共同開発を進められたか教えてください。
半谷氏:
ペットにとっての騒音リスクや、信頼できるエビデンス、専門家の方々についてネットや文献でリサーチを重ねる中で、動物行動学の専門家である茂木先生の記事に巡り合いました。そこで、まずはメールでコンタクトをとらせていただいたのがスタートです。すぐにオンラインで打ち合わせ設定することができ、その後直接お会いして具体的な相談を進めていきました。
我々からは開発中の商品について説明し、「犬や猫にとって、掃除機の音はどのような影響があるのか」「どの程度音を抑えれば快適だと感じられるのか」といった点について、専門的な立場からご意見を伺っていきました。
例えば「人間は2万Hz(ヘルツ)までの音しか聞こえないが、犬や猫は5万Hzほどの高周波まで聞き取れている」といった専門的なデータから、「ペットオーナーは日頃こういう悩みを抱えており、実はこんな工夫をしている」といった飼い主目線のリアルな実態まで、解像度高く教えていただきました。何より、専門的な動物行動学の知見を、プロではない我々にも非常にわかりやすい言葉でご説明いただいたこと説明していただいたことが強く印象に残っています。
専門家の監修が入ったことで、どのような成果・反響がありましたか。
半谷氏:
最も大きな成果は、プロモーションにおいて「ペットにもやさしい」というエビデンスをベースとした訴求が可能になった点です。
実際に、過去の自社製品と比べてどれだけ音(周波数)を抑えられているのかを測定し、茂木先生に検証をお願いしました。その結果、「これならペットの聴覚に配慮した音響特性だ」というお墨付きをいただけたことで、店頭POPやWebサイトで自信を持ってアピールできるようになりました。発表会の際にも先生に登壇していただき、直接お話しいただいたことで、メディアや市場からの注目度を一気に高めることができました。
加藤氏:
当社がペットにも効果的なやさしい運転音です」と訴求するだけでなく、権威ある専門家の第三者的な知見と解説が加わることで、商材としての説得力や納得感が格段に増しました。現場の販売スタッフにとっても、お客様に明確な根拠に基づいた説得力のある提案が可能となったことは、営業活動における大きな成果となりました。
共同開発を経て、その後はどのような展開(ヒット事例)が生まれましたか。
半谷氏:
最初はたった1ライン(1モデル)から始まった低騒音化の取り組みでしたが、非常に反響が良かったため、翌年には3ラインへとラインナップを拡大していきました。その際、各モデルが発する最大5万Hzまでの周波数をすべて調査し、茂木先生の監修のもとで「ペットにとってやさしい音の方向性になっているか」を確認しながら製品へと落とし込んでいきました。単発の企画ではなく、ものづくりのプロセスそのものに専門家の視点が組み込まれるようになりました。

低騒音化技術搭載 シャ ープコードレススティック掃除機
(左)ラクティブエアパワー EC-SR70A、(右)ラクティブエアステーション EC-XR3
貴社のブランドイメージや、市場からの見られ方にも変化はありましたか?
半谷氏:
当社の製品を支持してくださる「顧客層」そのものが未開拓の領域へ一気に広がり、結果としてブランドの市場価値も大きく進化しました。これまでは「人間(ユーザー)の快適さ」だけを追求していた当社のものづくりに、「ペット視点」という全く新しい評価軸が加わったことで、顧客へのアプローチ方法が根本から変わりました。
また、茂木先生からの「ペットオーナーは毛などのゴミをしっかり取れることも重要」というアドバイスもいただいたことで、部屋の端に溜まりがちなペットの毛もしっかり吸引できて回転ブラシにも絡みにくいなど、運転音以外への訴求にもつなげることができました。
このことにより、「これまでシャープの掃除機が届いていなかった、熱心なペットオーナー層」からの支持を獲得できたことは大きな成果です。ペットという新たな巨大市場にアプローチする手段を手に入れたことで、当社掃除機のブランド向上にも寄与できたと 思っております。

お取り組み前の期待値と、実際の取り組みにおいて良い意味での「ギャップ」はありましたか。
半谷氏:
期待していた以上のスピード感と柔軟なご対応で、本当に助かりました。
商品開発面以外でも、多大なるサポートをいただきました。メーカーとして新製品情報を展開する際、各種表現において社内的な法務チェックや表現調整が直前まで続くことは珍しくありません。動物の医学・医療に関わる表現には特に丁寧さと様々な配慮が求められますが、モ ンパニエ様はこうした急な依頼に対しても、常に迅速かつ柔軟に対応してくださいました。
また、我々が提示した商品特徴に対して、「この機能はペットの視点で見ると、実はこういう魅力に繋がりますよ」と、私たちが気づかなかったプラスαの価値や見せ方について、ディスカッションを通じて引き出してくださった点は、良い意味での嬉しいギャップでした。
今後の展望についてお聞かせください。
加藤氏:
今後は「低騒音化」という強みをベースにしつつ、それ以外の機能にもペット視点での価値を見出していきます。例えば「圧倒的な吸引力」は、ペットオーナーの労力を軽減することにはつながるものの、ペット自身には無関係に感じられます。しかし先生からは「掃除の時間を短縮することが、ペットにとっての負担軽減になる」という貴重なアドバイスをいただきました。
「低騒音化」だけにとらわれず、私たちが持つ様々な技術に対して「人間はもちろんペットの視点ではどんなメリットがあるのか」を常に掘り下げ、今後も新しい価値創出をしていきたいですね。
最後に、モンパニエとの共創(専門家監修)を検討されている企業様へのメッセージをお願いします。
半谷氏:
自社にはない高い専門性や知見を補いたいとお考えの企業にとって、モンパニエ様は最適のパートナーだと思います。
単に知識があるだけでなく、『それを市場やユーザーへどう伝え、届けるか』というプロモーションの視点まで一緒に考えてくれるのが本当に心強いです。
専門家への相談はハードルが高く感じられがちですが、柔軟に、こちらの悩みに寄り添って伴走してくれます。
自社商品に確かなエビデンスや新しい価値を加えたい企業様には、悩まずにまずは相談してみることをおすすめします。



